べっぴんさん|エースのモデル会社VANの破産・倒産後から再建まで
朝ドラ『べっぴんさん』で、栄輔のエース(エイス/AIS)の
モデル会社とされているのが石津謙介のVANです。
別の記事でもご紹介しましたが、同社はアイビールックの大流行によって
ブームを起こしましたが、乱脈経営も祟って昭和53年(1978年)に
500億円もの負債を抱えて倒産してしまいました。
また同年の4月には会社再建法を申請して会社の再建を図ろうとしましたが、
10月に東京地裁がこれを却下し、VAN(ヴァンジャケット)は
完全倒産ということになってしまいました。
しかし現在でもVANのブランドは健在ですし、商品も入手することができます。
つまりは完全倒産となったにも関わらず、その後に事実上の再建が
されたという稀なケースです。
その経緯もちょっと特殊なので、ご紹介していきます。
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エースのモデル会社VANの破産・倒産後から再建まで
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前述のとおり、昭和53年10月の会社更生法の申請が却下されたことで
VANは完全倒産ということになります。
通常であれば会社は清算されてしまうのですが、VANの倒産には
特殊な事情がありました。
それは数十億円分もあった商品の在庫です。
もともと同社は商品を作り過ぎる体質があり、それがブランド力を
下げてしまって倒産の一因となったと考えられていますが、
倒産時にも膨大な在庫を抱えていたのです。
またこのあたりもマスコミに報道されたので、VANには日本全国の
バッタ屋(倒産品買取業者)が押し掛けることになります。
しかし当時の破産管財人を務めた岸星一弁護士は、膨大な在庫を
バッタ屋に買い叩かれるよりも、新会社を設立して販売したほうが
債権者のためになると考えました。
バッタ屋に商品を卸してしまいますとまさに倒産ブランドとして
安売りされてしまいますが、ブランド力を維持した上で、
商標や在庫を新会社に承継したほうが金額も多く回収できると
考えたのです。
そのため岸弁護士はVANの労働組合に新会社の設立を呼び掛けて、
最終的には残っていた一部の社員たちがこれに呼応して、新会社を設立します。
それに先立って昭和54年(1979年)3月に、直営店だったVANショップの
一店舗の営業を再開します。
さらに同年の7月にもう一店舗の営業を再開することになりますが、
その頃には全国のVANのファンやアイビーのファンたちもこれを支持し、
VAN復活の一大ムーブメントとなります。
大口債権者である丸紅や三菱商事もこれを看過することができず、
残存社員たちと和解に及び、昭和55年(1980年)4月に正式に
新会社(ヴァンジャケット新社)にVANやKENTの商標の継承を
認めることになります。
こうして新生VANは規模を大幅に縮小しての船出となりました。
創業者の石津謙介も声をかけられましたが、積極的に新会社の経営に
参画することはありませんでした。
この新会社が後に旧VANと同様に、株式会社ヴァンジャケットに改称し
現在までに至ります。
とは言え、全国に20店舗前後のショップを構える程度で、
石津のVANと比較すると非常に細々とした経営です。
ところでちょっとややこしくなるのが、2001年の
VANファミリーショップの登場です。
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これは同年に商社の伊藤忠商事が主導して、株式会社ベルソンジャパンを設立。
ヴァンジャケットからライセンシーを取得して、VANファミリーショップを
全国展開したもので、ヴァンジャケットとは資本関係にない別会社です。
VANとは異なり経費のかかる路面店を開設するのではなく、ダイエーや
イオン、イトーヨーカドーなどのスーパー内に出店する形で
徐々に店舗数を増やしていきました。
また当時一世を風靡していたユニクロを意識して廉価な価格で
VANの定番商品のコピーやVANテイストのデザインの商品を
販売していきました。
ところがこの戦略は裏目に出てしまい、商品の適切な品質管理も
おこなわなかったことから、同社の商品は「粗悪品」の誹りを
受けることになります。
さらにはこの会社は運営にかなり問題があったようで、従業員の教育も
不十分だったことから店舗ごとの売上も次第に減少していくことになります。
その結果、ベルソンジャパンは設立からわずか5年後の2006年3月に倒産し、
VANファミリーショップは全店閉鎖に追い込まれます。
結局はVANとは何ら無関係でまったくの愛着もなかった人たちが、
VANの名前で廉価品を売ろうとしたのですが失敗したようですね。
しかし前記の通り、ベルソンジャパンはヴァンジャケットとは資本的に
無関係ですから、VANが再び倒産したわけではありません。
このような経緯を辿って、VANのブランドやヴァンジャケットは
現在に至ります。
ドラマではここまで描かれないと思いますが、楽しむ上での
一助となれば幸いです♪
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